ご挨拶

itou_photo第9回 日本機能性食品医用学会を開催するにあたり
 大阪大学大学院医学系研究科 生体機能補完医学講座
 伊藤壽記

 この度、第9回の日本機能性食品医用学会総会を大阪でお世話させていただくことになりました。一言、ご挨拶をさせていただきます。
 元来、“食”には栄養面での一次機能と嗜好・感覚面での二次機能があることは知られていましたが、それらに加えて、生体防御・生体制御といった三次機能があるという、“食品機能論”を、1980年台初頭に日本の研究班が世界に向けて発信しました。そこで、本邦では三次機能に特化した食品、すなわち機能性食品という言葉が生まれ、”functional food”として世界に広まったという経緯があります。本邦では、もともと中国の薬食同源思想から着想を得て、医食同源という言葉が生まれ、健康にとって“食”の重要性が言われてきました。こうした考えが日本人の高寿命につながったと考えられます。しかしながら、本邦では高度経済成長の下、ライフスタイルの欧米化が定着すると、がんを初めとする生活習慣病の顕在化が社会問題として浮上してまいりました。
 我々の教室ではこれまでに、こうした慢性疾患に対して、補完代替医療(CAM)の手法を現行の医療に上乗せして、患者さんのQOLの向上という観点から、臨床試験を通じてそれらのエビデンスを追及してまいりました。そして、我々はこの機能性食品が、CAMの手法の一つとして位置付けられると考えております。
 以上の背景から、機能性食品が臨床の場で補完医療として、どういう役割を果たしうるのか、そして今後、予防医学という観点でどのように進化していくのかという期待とその想いを込めて、本学会のメインテーマを、『補完医療における機能性食品の意義』と致しました。
 特別講演として、松澤佑次先生には生活習慣病とアディポサイエンスについて、阿部啓子先生には食品機能の統合的解析という内容でご講演いただきます。また、教育講演として、斉藤一郎先生にはアンチエイジングにおけるオーラルケアの重要性について、また山田静雄先生には薬・食相互作用についてお話いただきます。機能性食品に関する幅広い領域の演題を募集いたしますが、一応の要望演題と致しまして、下記のようなキーワードを考えておりますが、これらに限らず、臨床・基礎研究を問わず多くの演題をお待ちしております。

  • 各種疾患・病態(がん、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、炎症性疾患、アレルギー、うつ、認知症、皮膚疾患など)と機能性食品
  • 食と免疫(免疫栄養など)
  • 薬剤と機能性食品との相互作用
  • 新規機能性素材
  • オーラルケア
  • 高齢者の栄養・プロ(プレ)バイオティクス
  • ペットと機能性食品
  • ニュートリゲノミクスなどのバイオマーカー

 さて、12月の初旬は何かと気ぜわしい時期ではありますが、是非とも、多くの先生方や研究者の方々、そして学生の皆様に大阪大学吹田キャンパスにお越しいただきますよう、関係者一同、心よりお待ち申し上げております。

 

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